台風『30号』は、どう数えられるのか
2026年は10月下旬の時点で、すでに台風30号が先島諸島へ近づいた。「30号」は強さの等級ではなく、その年に発生した順番を示す番号である。年が変われば1号に戻る番号と、年をまたいで順番が続く「アジア名」。2つの名付けがどう組み合わさり、どんな例外があるのか、気象庁のルールから読みます。
先に結論
- 台風の番号は「その年に何番目に発生したか」だけを示す。気象庁は毎年1月1日以後、北西太平洋で最も早く発生した台風を第1号とし、あとは発生順に番号を付ける。年が変われば数え直しになるため、台風30号は「30番目の強さ」ではなく「その年30番目に台風になった」という意味でしかない
- 台風には番号と同時に、もう1つの名前「アジア名」が付く。台風委員会(日本を含む14か国・地域)があらかじめ用意した140個の名前のリストを発生順に割り当て、最後まで使うと先頭に戻る循環式で、番号と違って年をまたいでも順番はリセットされない。年間発生数の平年値25.1個から計算すると、おおむね5〜6年で名前が一巡する
- 番号も名前も、熱帯低気圧が「台風」に発達した時点で初めて付く。熱帯低気圧のままでは番号なし・名前なしである。一方、顕著な災害を起こした台風には、気象庁が後から「伊勢湾台風」のような固有名を定める例外があり、戦後10個が命名されている。大きな災害をもたらしたアジア名は、以後の台風に使わないよう変更されることもある
何が起きたか:10月下旬で、もう「台風30号」
2026年10月23日、大型で非常に強い台風30号が先島諸島へ接近した。台風の年間発生数の平年値は25.1個(気象庁)だから、10月の時点で「30号」に到達した2026年は、発生数だけ見れば平年を上回るペースの年だった。ここで素朴な疑問が出てくる。この「30号」という数字は、どこから来るのか。台風の強さを30段階で表した等級なのか、それとも通算の番号なのか。答えはどちらでもなく、「2026年になってから30番目に台風へ発達した」という発生順の番号である。番号の仕組みを知ると、「○号」という数字から読み取れる情報と、読み取れない情報の区別がつくようになる。
番号のルール:毎年1月1日にリセットされる発生順
気象庁によれば、台風の番号は「毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、以後台風の発生順に番号をつける」という単純なルールで決まる。対象は北西太平洋(と南シナ海)で発生した台風で、年が変われば再び第1号から数え直す。したがって同じ「10号」でも、去年と今年ではまったく別の台風を指す。細部のルールも決まっている。一度発生した台風が衰えて熱帯低気圧になった後、再び発達して台風に戻った場合は、新しい番号ではなく同じ番号を付け直す。国内向けの表記は「令和8年台風第30号」のように元号と番号を並べる形が基本で、国際的な表記では後述のアジア名に「(T2630)」のような記号(T+西暦の下2桁+番号)を併記して、年と番号まで含めて特定の台風を指し示す。
名前のルール:140個のリストを年をまたいで循環させる
番号とは別に、台風には「アジア名」と呼ばれる固有の名前が付く。管理しているのは、北西太平洋と南シナ海の台風防災に関する政府間組織「台風委員会」で、日本を含む14か国・地域が加盟する。2000年1月1日から、それまで米国が付けていた英語の人名に代えて、加盟国・地域が提案した固有の名前を使う方式に切り替わった。名前はあらかじめ140個がリスト化され(加盟国・地域が10個ずつ提案)、台風が発生するたびにリストの順に1つずつ割り当てられる。最後の140番目まで使うと、再び1番目の「ダムレイ」(カンボジアの言葉で「象」、2000年の台風第1号に付けられた最初の名前)に戻る。番号が年単位でリセットされるのに対し、名前の順番は年をまたいで続いていく点が、2つの仕組みの大きな違いである。日本が提案した10個はすべて星座に由来する名前(コイヌ、クジラ、トケイ、トカゲなど)で、特定の個人や法人、地名を連想させない「中立的な」名称として選ばれた。なお、発達した熱帯低気圧が担当領域の外から入ってきた場合は、元の担当機関が付けた名前をそのまま引き継ぐため、リストにない名前の台風が現れることもある。
番号が付かない段階:熱帯低気圧の間は「名なし」
番号と名前が付くのは、熱帯低気圧が「台風」に発達した時点からである。気象庁の定義では、台風とは北西太平洋や南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、最大風速が約17m/s以上になったものを指す。つまり、ニュースで「熱帯低気圧が台風に発達する見込み」と伝えられる段階では、その熱帯低気圧に番号もアジア名もまだない。逆の方向でも線引きは明確で、台風が衰えて熱帯低気圧に戻れば台風としての扱いは終わり、温帯低気圧に変われば台風情報自体が終了する。前節のとおり、熱帯低気圧から再発達した場合は元の番号に戻るため、「一度消えた番号の台風が戻ってきた」ように見えるケースも生じる。台風の「一生」の区切りは、勢力の上下ではなく、この定義の境界線で決まっている。
例外の名付け:伊勢湾台風のような固有名と、名前の「引退」
番号とアジア名のほかに、もう1層の名付けがある。気象庁は顕著な災害を起こした自然現象について名称を定めており、台風では戦後10個が命名されている。紀伊半島と伊勢湾沿岸に高潮被害をもたらした伊勢湾台風(昭和34年台風第15号)、青函連絡船・洞爺丸の遭難で知られる洞爺丸台風(昭和29年台風第15号)、室戸台風に経路が似ていた第2室戸台風(昭和36年台風第18号)などが代表例で、令和に入ってからは、令和元年房総半島台風(台風第15号)と令和元年東日本台風(台風第19号)が新たに加わった。これらは番号を置き換えるものではなく、災害の記憶を呼び名として残すための、番号への「上乗せ」である。もう1つの例外はアジア名の側にある。アジア名は繰り返し使うのが原則だが、大きな災害をもたらした台風の名前は、台風委員会の加盟国・地域からの要請を受けて、以後の台風に使用しないよう変更されることがある。使い回しのリストから静かに外される「引退」の仕組みで、被災地への配慮と、同じ名前による混乱の回避が理由とされる。
出典
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